【掲載日:平成23年4月15日 最終更新日:平成23年9月5日】

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 弊社では、現在平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による被害把握のため、独自による緊急災害調査を実施しております。

 各災害調査報告を取り纏め次第、随時本ページにおきまして公開いたします。

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2011.04.15「東北地方太平洋沖地震関連緊急災害調査情報」専用ページを開設いたしました。

 

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4.11東北地方太平洋沖地震の余震に伴う地表地震断層(pdf版)

1.はじめに

 

 4月11日福島県いわき市を震源とする内陸地震に伴って出現した地表地震断層の現地調査は、4月23,24日、5月7,8日に東北支社の高野、蓑、大内により行った。また、5月27日には東北支社の冨岡、中倉が現地調査を実施している。なお、現地調査時には道路の段差の大半は補修されていたが、農地、山地部、河川横断箇所等では、概ね発生時の状況を確認することができた。

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2.地震の概要

 

 激甚な津波被害をもたらした3.11東北地方太平洋沖地震の1ヶ月後にあたる4月11日に、福島県いわき市を震央とする北東-南西伸張の正断層型の内陸地震が発生し、いわき市内に延長10kmを越える2条の地表地震断層が出現した。気象庁ホームページによる地震の概要を下記に引用する。

 

発生時刻

平成23年4月11日 17時16分

震源位置

福島県浜通り(北緯36.9度、東経140.7度)

マグニチュード

7.1

震源の深さ

約10km

最大震度

6弱(福島県中通り、福島県浜通り、茨城県南部)

 

3.地表地震断層

 

 本地震の震央は『活断層研究会編(1991)新編日本の活断層-分布図と資料、東京大学出版会』による北北西-南南東方向の数条のリニアメント(確実度Ⅱ)よりなる井戸沢断層の西側に位置し、地表地震断層は最も西側のリニアメントに沿って出現した。この地表地震断層に対して、東京大学地震研究所ホームページ掲載の『2011年4月11日の福島県浜通りの地震に伴う地表地震断層』では「塩ノ平断層」と仮称していることから、本資料でもこの仮称を採用した。

 本地震時には、上記塩ノ平断層の他に、「新編日本の活断層」で井戸沢断層の北側に認定されている北西-南東方向のリニアメントである湯ノ岳断層(確実度Ⅱ,活動度B)及びこの南東側延長部に地表地震断層が出現した。地表地震断層は、見かけ鉛直変位量が最大約0.6mの正断層、撓みよりなり、延長約14kmの範囲に確認された。湯ノ岳断層の南東側延長部の地表地震断層付近には、『須貝貫二他(1957)常磐炭田地質図ならびに説明書、地質調査所』によれば北西-南東方向の藤原断層が通っていることから、本資料では湯ノ岳断層の南東側延長部の地表地震断層を藤原断層と仮称した。

 地表地震断層が現れた塩ノ平断層、湯ノ岳断層は、阿武隈山地の阿武隈変成岩類、花崗岩類等とこれらを不整合で被覆する新第三系の堆積岩類分布域に位置しており、いずれの断層も西側が低下する正断層であり、今回出現した地表地震断層も同じずれのセンスである。

 また、藤原断層の南西側には、藤原断層に直行から斜交する2条の開口亀裂~0.6mの鉛直変位を伴う地表地震断層~地変が認められ、これらのうち一条の断層は「須貝貫二他(1957)常磐炭田地質図」では名称がない短い断層が引かれていることから、本資料では藤原断層に直行する短い地表地震断層を、「無名断層」と呼称した。

 以上に述べたように、4.11余震時には、2条の方向が異なる地表地震断層が同時に形成され、この他に連続性が短いものの藤原断層に直行する地表地震断層が一部に形成されている。

 

4.地表地震断層による被害

 

 塩ノ平断層は、道路、農地、住宅、中学校、植林地などを横断しており、道路、水田に段差、住宅、中学校に亀裂、傾倒等、植林の傾倒等の被害が発生している。また、近傍でがけ崩れ、地すべり等の被害が発生している。

 湯ノ岳断層は、道路、農地を横断しており、道路、水田に段差の被害が発生いている。藤原断層では、道路、農地の他に温泉施設、ゴルフ場、寺院を通っており、これらに亀裂、傾倒等の被害が認められた。

 また、無名断層が常磐自動車道を横断する箇所(切土区間)では、舗装面に開口クラックが発生したが、現地調査時には補修されていた。